8年前の僕へ。君が今、布団の中でポチろうとしてる「T」について。

8年前の僕へ。君が今、布団の中でポチろうとしてる「T」について。

拝啓、8年前の僕。

元気か? いや、元気じゃないな。仕事にちょい疲れて、でも「金持ち父さん」的なものに憧れて、夜な夜な布団にくるまってスマホいじってるだろ。

今、肌寒い秋の夜、君は薄暗い部屋で、証券アプリの画面を凝視してる。 目の前には「AT&T(T)」の文字。 そして、目を見張るような「利回り●%」の数字。

「うわ、めっちゃ高いじゃん」 「米国の通信インフラだろ? 潰れるわけないし、最強じゃん」 「寝ててもチャリンチャリン、キター!」

そう思って、人差し指に力を込めてる。 わかるよ、その高揚感。アドレナリンがドバドバ出てるだろ。


ポチるな、とは言わん。 どうせ言っても、君はポチる。知ってる。

だがな、未来から来た僕が、これだけは言っておく。 君が今買おうとしてるのは、「安定の高配当株」じゃない。 **「君のメンタルを8年間ボコボコにし続ける、鬼教官」**だ。

信じられないだろ? 君、そいつを買った瞬間から、地獄…いや、素晴らしい(?)試練が始まる。

まず、君が買った次の日から、そいつは下がる。 「押し目だ」と思ってナンピンしたら、もっと下がる。

君が「安定」だと思ってた通信株が、なぜかITバブル崩壊後のベンチャー株みたいな動きをしだす。 毎晩、寝る前に真っ赤な画面を見るのが日課になる。

隣でGAFAMとかがロケットみたいにぶち上がっていくのを横目に、「なんで僕は…」って、本気で枕を濡らすことになるぞ。

で、極め付けだ。 数年後、君が含み損に耐えに耐え、もはや「配当金だけが心の支え」になった頃。 減配だ。

休日の朝、淹れたてのコーヒーを飲んでる瞬間に、そのニュースは飛び込んでくる。 マジで噴き出すから、スマホから顔を離しておけ。

「メディア事業をスピンオフするから、実質減配ね」

理屈はわかる。わかるが、そういうことじゃねえんだよ。 「高配当」っていう最後の砦を、自ら爆破しに来るんだ。

あ、ちなみに。 そのスピンオフで、WBD(ワーナー・ブラザース)とかいう謎の株が勝手にポートフォリオにねじ込まれる。 そいつも、AT&T先生がよこした新たな刺客だ。期待しとけ。(白目)


なんで、こんな手紙を書いてるか

「じゃあ、やっぱり買うなよ!」って言いたいだろ? それがな、不思議なもんで。

8年後の僕は、まだそいつを握りしめてる。 あれだけ裏切られ、あれだけ資産を削られ、あれだけイライラさせられたのに、だ。

なぜか? もちろん、減配してもまだマシな利回りだから、ってのもある。 でも、一番の理由は、**「諦め」と「慣れ」、そして「感謝」**だ。

意味わかんないだろ? そいつはな、君の「投資家としての甘い幻想」を、全部ぶち壊してくれたんだ。

  • 「高配当=安心」じゃないこと。
  • 「大企業=安定」じゃないこと。
  • 株価が下がると、人間がいかに冷静じゃいられなくなるか。

全部、こいつが含み損という名の授業料で、徹底的に叩き込んでくれた。 だから、君が今ポチろうとしてるそいつは、君の師匠になる株だ。 おかげで8年後の僕は、ちょっとやそっとの下げじゃ動じない、変な耐性だけがついた。

だから、まあ、買え。 そして、せいぜい苦しめ。 その真っ赤な含み損は、君が「投資家」として成長するための、何よりの教科書になる。

8年後の僕より。